データドリブンな意思決定が重要視される現代のビジネスにおいて、多くの専門家や経営者が「フェルミ推定(Fermi Estimation)」を活用しています。とりわけスタートアップの起業準備などで見られるように、フェルミ推定は新規マーケットにおける市場規模の予測や、課題・問題の評価といった面で重宝されています。フェルミ推定はその他にも、コンテンツマーケティングEC事業など、幅広い業界で重要ツールとして注目を集めています。

本記事では、フェルミ推定の基本的な概念から具体的なビジネスシーンでの活用方法まで、詳しく解説していきます。SEO対策といったデジタルマーケティング領域でも利用できるフェルミ推定の知識を深め、自身のビジネス競争力をさらに高めましょう。

フェルミ推定とは?

フェルミ推定とは

ここではフェルミ推定の概要・目的や覚えておくべき基礎知識に加え、一部の人々から「フェルミ推定はくだらない」と言われる理由についてまとめます。

フェルミ推定の概要・目的

フェルミ推定とは、物理学者エンリコ・フェルミ博士にちなんで名付けられた推定法で、一見予想もつかないような数字を、論理的思考を頼りに概算する思考法です。具体的には、限られた情報から大雑把ながらも比較的正確な見積もりを出す手法を指し、これがフェルミ推定のやり方の基本となります。

フェルミ推定の目的は多岐にわたります。新しい市場や商品に関する市場規模予測、リスティング広告ディスプレイ広告の評価、新規プロジェクトのリスク分析など、様々な局面で活用されています。限られたデータや情報しか持たない状況での意思決定を迫られる場面においては、フェルミ推定に加えてSWOT分析3C分析などマーケティング戦略の手法を組み合わせるのも有効とされています。

フェルミ推定の覚えるべき基礎知識

フェルミ推定の基礎知識としては、以下のような点が挙げられます。

  • 正確な数値を出すものではない:フェルミ推定は大雑把な評価や概算を行うもので、正確な数値を出すためのものではありません。
  • 問題を細部に分解する技法である:フェルミ推定は、大きな問題を小さな部分に分解し、それぞれの部分における問題を解決していく手法を取ります。この点において、ワークフローの最適化に用いる思考プロセスと似ています。フェルミ推定の例題やフェルミ推定例題の解答は多くの書籍で紹介されていますが、本記事でも後ほど紹介します。
  • 既存の情報を最大限活用する:フェルミ推定においては、過去の経験や知識、既存のデータを活用して推定を行う姿勢が大切です。そのため、一般常識とされる基本知識は予めインプットしておく必要があります。

フェルミ推定がくだらないと言われる理由

実のところ「フェルミ推定がくだらない」という意見を持つ人も、少なくありません。理由として、あくまでも「推定」であるため概算した数値が正確さに欠ける、という点が挙げられます。フェルミ推定によって導き出した回答を絶対的な解答として受け取ると、誤解が生じるケースもあります。フェルミ推定の本来の目的とは、完璧な答えを求めることではなく、限られた情報から最も合理的な答えを導き出すことにあります。そのため、フェルミ推定の真価は、導き出された解答よりも「推定のプロセス」にあると言えるでしょう。これは、ブランドマネジメントブランド戦略の策定にも通じる考え方です。

フェルミ推定のビジネス活用事例

フェルミ推定は、多くの企業や業界で実際に利用されており、具体的なビジネス事例を通じてその有用性が実証されています。新商品の販売戦略を策定するケースでは、4p分析PEST分析を併用し、具体的な市場戦略や顧客ニーズを最初に予測します。この段階で、市場規模を算出する手法としてフェルミ推定が役に立ちます。

メールマーケティングインフルエンサーマーケティングSNSマーケティングの領域でも、キャンペーン施策の効果や広告のリーチ数を予測するうえで、フェルミ推定が有益とされています。例えば、特定のインフルエンサーとのコラボレーションでどれだけのエンゲージメントが期待できるか、あるいは新しいメールキャンペーンにおけるメール開封率やクリック数をフェルミ推定を基に大雑把に予測し、予算申請を行うことが考えられます。

オウンドメディアの戦略策定やECサイトの立ち上げにおいても、市場の潜在的なニーズや規模を把握するためのツールとして、フェルミ推定が活用されています。ECサイトの月間流入数や購買率の見積もりを算出する際、フェルミ推定の手法が組み込まれることもあります。

このように、フェルミ推定の基礎知識や、具体的なやり方を理解しておくことで、さまざまなビジネスシーンにおける意思決定を迅速に行うことが可能となります。フェルミ推定をうまく活用することで、スタートアップにおける創業補助金起業資金の適切な予算配分が可能となるなど、ビジネス全般にわたるメリットが期待されます。

フェルミ推定やり方を5ステップで解説

フェルミ推定のアイデア

フェルミ推定は、精度の高いデータがない状況下で大まかな情報を頼りに推測する手法です。例えば「日本におけるタクシーアプリの利用者数は?」「アメリカにおけるECモールの総数は?」など、日常生活で即座に答えられないような問いを、手元の情報だけで答えるための方法です。以下、フェルミ推定のやり方を5つのステップに分けて解説します。

  1. 問題の特定と簡略化:まずは、具体的な問題を明確にします。ここではフェルミ推定の例題として「日本で1日に飲まれるコーヒーの総量は?」という問題について考えます。こうした問題を効果的に解くためには、簡略化が必要です。このステップでの簡略化は、複雑な問題をシンプルに分解して、取り組みやすくすることを意味します。
  2. 一般的な知識の活用:このステップでは、フェルミ推定における基礎知識としての一般常識や既知の情報を活用します。例えば、日本の総人口や一人当たりのコーヒーの消費量などの情報が役立ちます。ここでの情報は、必ずしも正確である必要はありませんが、例えば、以下のような情報を事前に頭に入れておくとスムーズに進められます。日本の総人口:約1億2000万人(2022年)、 日本人の平均寿命:84歳(男性81歳、女性87歳、2020年)、  日本の国土面積:約38万平方km(平野部30%、山間部70%) 、世界の総人口:約80億人(2023年)
  3. 計算と仮定の設定:次に、具体的な計算を行います。例えば、日本の総人口1億2000万人とし、1人あたりが1日に200mlのコーヒーを飲むと仮定すると、日本全体での1日のコーヒー消費量は24億ml、つまり240万リットルとなります。このような仮定は、問題の性質や利用可能な情報に応じて調整できます。
  4. 計算結果の評価:計算結果が得られたら、それが現実的かどうかを評価します。特に、「フェルミ推定はくだらない」といった批判がある中で、算出結果の評価は信頼性の観点から重要となります。計算結果が現実と乖離している場合、仮定の部分を分析し、必要に応じて修正を行います。
  5. 結果の共有と応用:得られた結果を共有し、実際のビジネス場面で応用できるかを考えます。フェルミ推定は、完璧な答えを出すためのものではなく、ある問題に対する大まかなアプローチを考えるための手段です。計算結果を活用し、具体的な戦略や次のアクションに落とし込むことが重要です。

フェルミ推定は、情報が不足している状況でも、有効な推定を行える強力なツールです。この方法をマスターすることで、さまざまな問題解決に役立てることができます。フェルミ推定は面接試験といった場面でも多用されているほか、マーケティング分野での市場規模の推定などに応用されています。

フェルミ推定はなぜ面接試験で使われる?例題と解答

フェルミ推定の活用法

フェルミ推定は、不確実な情報の中で有効な推定値を求める手法として知られていますが、就職活動における面接選考でよく出題されることでも有名です。これは、応募者の論理的思考や問題解決の能力を評価するためです。以下、就職面接でよく使われるフェルミ推定の例題とその解答方法を紹介します。

フェルミ推定面接問題の事例

例題1「日本の電柱の数を推定してください」:

フェルミ推定の定番テーマ「電柱の数」は実によく取り上げられる問題です。まず、日本の市町村数を考慮し、国内各地方における平均的な電柱の数を推定します。フェルミ推定によって導き出された各地方の電柱数を合計することで、日本全体の電柱の数を算出できます。

例題2「2023年に日本でZOOMアプリを利用している企業の数を推定してください」:

まず、日本企業の総数を基に、リモートワークを導入している企業の割合を推定します。次に、その中でZOOMアプリを利用していると考えられる企業の割合をさらに推定します。これらの数値を掛け合わせ、ZOOMアプリを利用する企業数を推定します。

例題3「日本で起業成功例として取り上げられるスタートアップの割合を推定してください」:

まず、日本において新規起業したスタートアップ数を推定します。次に「起業成功例」の定義を自分なりに考えます。例えば「5年以上継続して事業を行っている」「その中でメディアにX回数取り上げられている」といったように、成功例の条件を定義した後、これに当てはまる企業の割合を推定します。

フェルミ推定解答のポイント

面接におけるフェルミ推定の目的は、正確な答えを求めることではありません。むしろ、問題をどのように分解して前提や仮定を立てるか、その思考プロセスを明確に伝えることが求められます。

フェルミ推定の練習を通じて、複雑な問題に対して冷静にアプローチする力を身につけることができます。企業の採用担当者は、あなたの論理的思考や問題解決能力、そしてコミュニケーション能力を評価します。フェルミ推定をマスターして、自信を持って面接に臨みましょう。

フェルミ推定に関するQ&A

フェルミ推定とは何ですか?

なぜフェルミ推定は面接などで問われることが多いのですか?

フェルミ推定を学びたいと思っています。どのような資料や本を参考にすればよいでしょうか?

フェルミ推定が「くだらない」や「意味がない」という意見も聞きますが、実際はどうですか?

まとめ

フェルミ推定は、具体的なデータが不足している場合でも大まかな情報を基に推測できる一つの思考法であり、ビジネスの現場で多用されています。就職活動における面接での質問としても、応募者の論理的思考や問題解決能力を確認する有効な手段となります。

この場合、具体的な答えが正解かどうかというよりも、問題へのアプローチ方法や思考プロセスが重視されます。フェルミ推定を学びたいという人々向けに多くの書籍が販売されていますが、本記事では無料でフェルミ推定の本質を徹底的に解説しています。ブックマークした上で何度も読み込み、それでも足りない部分がある場合に有料コンテンツや本を購入するのが良いでしょう。