落ちると気まずい？報酬は違法？リファラル採用とは徹底解説

人を雇うのに最も頭を悩ませるのはコストと手間でしょう。そこでいま「リファラル採用」という手法を採用する企業が増えています。この記事ではリファラル採用について特徴やメリットとデメリット、リファラル採用の事例やリファラル採用で報酬を払うのは違法ではないのか、などについて解説していきます。

リファラル採用（リファーラル採用）とは

リファラル採用とは、企業が従業員や関係者から、友人や知人を推薦してもらい、その候補者を採用するプロセスのことです。リファラルとは英語で“Referral”と書き、日本語で『紹介』の意味ですので、リファラル採用は『紹介採用』とも訳せます。英語の発音によっては『リファーラル採用』とも表記することがあり、欧米では広く取り入れられている方法で、日本でもベンチャー企業を中心に増えています。

リファラル採用が増えている要因：新卒採用の限界

リファラル採用（リファーラル採用）はベンチャーを中心に増えていましたが、最近では大企業も導入しています。リファラル採用が増えている要因に新卒採用の限界が挙げられています。

従来の日本の就職市場では、独自の新卒採用の仕組みが一般的でしたが、昨今の少子高齢化で新卒の就労人口が減少。退職するベテランも増える一方ですので、有能な若手社員の採用は各社にとって重要な課題です。さらに就職しても入社後のミスマッチからすぐに辞めてしまう若手社員が多く、『離職率』が年々高くなっていることも会社の人事部を悩ませている問題となっています。

就職活動の面接では圧迫面接があったり、『自分を野菜に例えるなら？』のような独特な質問をされたり、フェルミ推定を用いた答えをさせたりなどテクニックが複雑化しています。また、就労後も新卒1年目の社員がOJTで挫折したり、360度評価に悩んでしまったりなどで退職する人が後を絶ちません。

これらの問題を解消できると期待されているのがリファラル採用で、新卒採用を補う仕組みとして多くの企業が注目しています。リファラル採用は新卒の人に対しても使うことができますので、必ずしも既卒の人でないとダメという決まりはありません。大学OBが優秀な後輩をリクルートするのも新卒生へのリファラル採用として良い例です。

リファラル採用のメリット

リファラル採用のメリット１：コスト削減

まずリファラル採用の一番のメリットはコストの削減です。『リクナビ』などの広告媒体や人材紹介サービスなどにアウトソーシングすると、広告費や手数料など大きな費用がかかります。リファラル採用ならその費用を低く抑えつつ、高いROI（費用対効果）が期待できます。

例えば採用転職サイトを利用した場合、8週間の人材募集広告を掲載すると約40万円の費用がかかるとされています。しかし、リファーラル採用なら社員などが自分たちの知り合いやコネクションのある人たちを紹介してくれるため、場合によってはほぼ無料で採用に至ることができます。このようにコストを格段に削減できるのもリファラル採用の最大のメリットです。

リファラル採用のメリット２：品質の高い人材採用と低い離職率

次に品質の高い候補者の獲得が可能なことがリファラル採用のメリットに挙げられます。既存の従業員が候補者を紹介する際には、候補者が社風や仕事内容に合うか真剣に考えます。そして、従業員自身の信頼できる人物やプロフェッショナルを紹介するため、リファーラル候補者は通常、品質が高いと考えられています。

またリファラル採用は一般的に他の採用方法と比較して定着率や成功率が高いとされています。なぜなら、候補者と既存の従業員との関係があるため、事前に社風や業務内容、自分がチームに入った場合の期待値を深く理解することができるからです。また、入社後のキャリアパスなど本音で気になる点も社内にいる人から実際の情報を聞くことができる点もミスマッチが起きづらい要因とされています。

リファラル採用のメリット３：ワークフォースマネジメントの向上

効率性と迅速なプロセスも期待できます。候補者の紹介から面接までの手続きが簡素化され、候補者の選考期間が短縮されることがあります。

ワークフローをすぐに理解してくれる新しい人材がチームに入ることで従業員の満足度も上がります。従業員が自身の友人や知人を会社に紹介する機会があると、従業員の満足度とエンゲージメントが向上する傾向があるため、ワークフォースマネジメントもしやすくなります。従業員は会社の一部として参加感を持ち、その結果生産性の高いチーム文化を形成する助けとなります。

リファラル採用のデメリット

リファラル採用のデメリット１：人材が多様性に欠ける可能性

リファーラル採用は、既存の従業員のネットワークから候補者を採用するため、多様性が不足する可能性があります。というのも、同じ社会的背景や専門分野の人々が推薦されることが多いためです。前の職場の同僚を採用した結果、前職場の元社員の割合が増えてしまって派閥を形成するなどのリスクもあります。

このような場合には、ジョブローテーションを行うことで社内の異なる部署を経験させて馴染ませていく手法が有効です。

リファラル採用のデメリット２：不透明な採用プロセス

リファーラル採用は、推薦者の主観的な評価に基づいて行われることが多く、候補者の実力や適格性が過大評価される場合があります。これにより、採用過程の品質が低下し、適切でない候補者が採用される可能性もあります。

他にも、リファラル採用において、選考プロセスが不透明になることがあります。他の候補者と比較して、推薦された候補者に対する評価が不明確である場合、従業員間で疑念や不信感が生じる可能性があります。

リファラル採用のデメリット３：落ちるとトラブルの種にも

リファラル採用で落ちると紹介した社員が気まずいだけでなく、トラブルの種になることがあります。推薦された候補者が採用されなかった場合、紹介した社員は『自分が否定されている』と個人的に捉えてしまい、その人のモチベーションに大きく影響してしまいます。

リファーラル採用をする際には明確な基準を設け、人事におけるKPIを明瞭にしておくと透明性の高いリファーラル採用が可能になるでしょう。

リファラル採用は落ちると気まずい？トラブルの原因

リファラル採用はすでに働いている内部の社員が知り合いを紹介する採用活動のためミスマッチが起こりにくいとされていますが、紹介した人が落ちると社員が気まずさを覚える懸念があります。

言うまでもなく、社員の紹介だからと言って100％採用が決まっているわけではなく、リファラル採用でも落ちることは当然あります。そのため、就職活動をしている人からすると『リファラル採用で落ちると気まずい』と心配になるでしょう。

採用側も、リファラルが推薦した応募者を採用しなかった場合、リファラーとの関係が悪化することを防ぐために配慮することがあるでしょう。友人がリファラル採用で落ちると気まずいという不安に対しては、マッチしなかった理由を丁寧に説明し、紹介してくれたことに対する謝意を丁寧に伝えましょう。

リファラル採用で落ちたケースの気まずい状況を軽減するために、リファラーとの関係やコミュニケーションを大切にし、失敗から学び、前向きに進むことが大切です。

リファラル採用のトラブル：モチベーションの低下

リファラル採用で起こるトラブルには落ちる気まずさのほかに、他の社員のモチベーションが低下することが挙げられます。優秀な人材を採用して、仮にその人が紹介した社員よりも早期に出世してしまった場合、紹介者にとって喜ばしいことではない結果ともなります。その場合、その紹介者が批判分子となってしまう事もあります。

このような場合は、事前に紹介者に対して採用した人の待遇について事前に共有できる範囲で伝えることが賢明でしょう。例えば『君が紹介してくれた○○さんだが、スキル的に他の従業員よりも経験値が高いから幹部候補にもなるだろう』と非公式な話し合いを事前にしておけば、紹介した社員の手柄にもなりますし、リファラル採用で入社後もトラブルに発展する可能性は下がります。

リファラル採用報酬は効果的なのか？

リファラル候補者が採用される場合、従業員やリファラーに対して、報酬やインセンティブが提供されることもあります。

しかし、リファラル報酬は応募者や優秀な人材を採用するために良いインセンティブにもなりますが、必ずしも機能しないことも少なくありません。日本では報酬目当てで、友人や知人に声をかける社員は少ないためです。それよりも友人の役にたちたい、会社や友人に感謝されたいという気持ちで動く場合が多いとされています。紹介した社員が満足感を得られ、リファラル採用に協力する気持ちを維持できる仕組みを作りましょう。

総じて、リファラル採用報酬は効果的な採用戦略と考えられますが、その効果は企業のニーズや文化に合わせて適切に設計され、実施される必要があります。

リファラル採用報酬の決め方

報酬の適切な設定: リファラル報酬の金額や条件が適切でない場合、従業員のモチベーションを低下させる可能性があります。日本企業のリファラル採用における報酬の平均は10万～30万円程度と言われています。

リファラル採用報酬の決め方として、一般的なガイドラインと考慮すべき要因は次のとおりです。

• 役割や職種の重要性: リファラルが成功報酬を獲得できるかどうか、およびその金額は、リファラルが紹介するポジションの重要性に大きく依存します。高度な専門知識や経験が必要な職種は、通常、高い報酬を提供します。
• 給与水準: リファラル報酬は、企業の一般的な給与水準に合わせることが一般的です。つまり、リファラルが成功した場合、採用された候補者の給与水準に基づいて報酬が支払われます。
• 成功報酬の形式: リファラル報酬は、通常、現金やギフトカード、旅行券、ボーナス、株式オプションなどの形式で提供されます。報酬の形式は企業のポリシーやリファラルとの合意に基づいて決定されます。
• 市場競争: 他の企業との競争が激しい場合、リファラル報酬を増額することがあります。高いリファラル報酬は、従業員や外部ネットワークからの優れた候補者の紹介を奨励するのに役立ちます。
• 税金および法的規制: リファラル報酬は税金の対象となることがあるため、税務および法的規制を考慮する必要があります。企業は法的アドバイスを受け、適切な報酬体系を設計するべきです。

リファラル採用報酬は、企業の人事戦略や採用目標に合わせて調整されるべきであり、公平で透明な報酬体系を確立することが重要です。企業は社内ポリシーとリファラルの期待について明確にコミュニケーションをとり、リファラルプログラムを成功させるために努力してください。

リファラル採用報酬で違法になることも？

一般的に、リファラル採用自体は合法であり、多くの企業が採用活動の一環としてリファラルプログラムを実施しています。ただし、いくつかの法的要因に気をつける必要があります。

職業安定法によると、「労働者の募集にあたり報酬を与えることは原則禁止。しかし、賃金・給与として支払う場合は例外として認める」となっています。本来は、人材紹介をするためには資格が必要となります。その資格を持っていない人が紹介をしてリファラル採用の報酬を受け取ると違法となってしまいます。

しかし、企業がリファラル採用の報酬を従業員に払うことは原則違法となりますが、例外として、賃金や給料として支払うことは認められているのです。そのため、リファラル採用の報酬は、賃金や給料の形で支払うことが基本であり、報酬について就業規則や雇用契約に明記する必要があります。

企業は適切な法的アドバイスを受け、リファラル報酬が違法と見られないよう心がけましょう。また、従業員にもリファラルプログラムに関する法的要件を明示し、遵守するよう指導することが重要です。

リファラル採用の合格率　難しいのか、受かりやすいのか？

通常の採用プロセスよりもリファラル採用の合格率の方が、1.5〜3.0倍ほど高いと言われています。だからと言ってリファラル採用が受かりやすいということではありませんので注意しましょう。リファラル採用の合格率が高い理由として以下の点が挙げられます。

• 社員が、紹介しても良いと思われる人物を一度選考していること。
• 推薦者が信頼を受けている場合、企業はその信頼を元に、候補者に対する評価を高めること。
• リファラルを通じて応募すると、通常の応募者よりも内部情報や文化に関する洞察を持っていることが期待されるため、企業はより適切な候補者を見つけやすくなること。

リファラル採用大企業の事例

最後に、リファラル採用の事例を紹介します。実際にメルカリやグーグルなどの企業は採用の半分以上をリファラル採用で実施しています。

まとめ

日本の労働人口は今後減り続けることが予想されています。起業の準備段階の人は優秀な人材を集めることで苦労するならリファーラル採用を検討するのも良いでしょう。

リファラル採用にはメリットもデメリットもありますので特徴を理解した上で導入するようにしましょう。また、リファラル採用で報酬を出すことは違法ですが、賃金や給料、もしくはクーポンなどの形に転換する分には合法ですのでこちらも覚えておいてください。ただ、知り合いの紹介だからと言ってリファラル採用が受かりやすいというわけではなく、落ちる可能性もあります。

企業の人事担当者は適切な人材を探すことがますます困難になるなか、リファラル採用への期待が高まっています。