今や世界のRakutenとなった日本のECモールの『楽天』ですが、創業者が三木谷浩史氏であることは多くの人が知っているところでしょう。

2015年には世界の長者番付で19位にランクインするほど日本を代表する実業家となった三木谷氏ですが、その生い立ちや楽天を成功に導いた秘訣について解説していきます。

三木谷浩史氏の資産とは|資産の内訳

三木谷浩史氏の楽天ホームページ

出典:楽天ホームページ

2015年にはフォーブス誌の日本人富豪ランキングで3位にランクインした三木谷浩史氏は、その当時68億ドルの資産(およそ1兆400億円)を有していたとされています。

三木谷氏は楽天の創業者で大株主のひとりでもあります。資産の内訳は公開されていませんが、楽天の有価証券報告書を見ると三木谷氏の資産の多くは楽天の株式であることが考えられます。

三木谷浩史の株式資産

楽天の有価証券報告書によると同氏は2023年時点で8.25%の株式を所有していますが妻の三木谷晴子氏も6.20%を所有しており、夫妻で14.45%の楽天株式を保持していることになります。また、合同会社のクリムゾングループが10.59%の保有率で最大株主となっていますが、このグループは三木谷氏が企業代表者を務めているため、実質的に三木谷氏の個人資産管理会社となっています。そのため、クリムゾングループの株式も含めると三木谷浩史・晴子夫妻で25.09%の株式を保有していることになり、楽天株全体の2.5割の株式が三木谷家に所有されている形になっています。

また、東京都内の高級住宅街である渋谷区神山町に自宅を持っているとされており、総工費30億円とも一部の報道では言われていることから相当な資産額を有していると思われ、住宅と土地代の資産額も計上すると大きなものとなると考えられます。

フォーブスジャパンの長者番付で三木谷浩史は13位にランクイン

出典:フォーブスジャパン

2023年のフォーブスジャパンが発表した日本長者番付では資産額5060億円で13位にランクインしています。2015年には自身最高の3位からランクダウンした形ですが、これは楽天のモバイル事業による損失などで株価が下落したことに伴う資産の減損であると考えられます。

三木谷浩史氏のその他の資産の詳細な内訳は不明ですが、三木谷氏個人の名義ではなくとも楽天やクリムゾングループ、三木谷興産、または妻の晴子氏名義で資産を有している可能性が高いため、実際には5060億円以上の資産を有していても驚きではありません。

三木谷浩史氏の年収

楽天の創業者でありながら、現在も同社の代表取締役会長兼社長、そして最高執行役員を務めています。2022年度の楽天の有価証券報告書を見ると三木谷浩史氏の年収が開示されています。

楽天の有価証券報告書に書かれた三木谷浩史氏の年収

この報告書によれば三木谷氏への報酬は総額1億600万円とされており、内訳は基本報酬が1000万円とストックオプションが9600万円であることが明らかになっています。そのため、三木谷浩史氏の年収は1億600万円であったと言えますが、他の副会長と副社長の報酬の方が高くなっている点を見ると会長兼社長である三木谷氏の年収が低いのは異例にも見えます。

これは上記のように三木谷氏が実質的な大株主でオーナー企業であることから、年収よりも資産額に重きをおいたことによる配慮だと推察されます。

三木谷浩史氏の生い立ち、経歴

楽天を日本を代表する企業に一代で育て上げ、近年では海外にもサービスを展開するなど楽天の成長は止まりません。欧州サッカーの超有名クラブであるバルセロナFCの主要スポンサーを務めたことで海外にも知られるようになり、最近では海外でも『Rakuten TV』を展開するなど世界にも顧客を持つようになってきています。

そんな三木谷氏の生い立ちと経歴について見ていきましょう。

生年月日 1965年3月11日
出身 兵庫県神戸市
最終学歴 ハーバード大学経営大学院

三木谷浩史氏の生まれ

三木谷氏は兵庫県神戸市に生まれ、父親は金融論が専門で、日本金融学会学長でもあった神戸大学名誉教授の三木谷良一氏です(2013年に死去)。業務用総合食品の勝者である東洋商事の社長を務めた浦島秀雄氏は外祖父にあたり、実業家や金融関連のエキスパートが家族にいる環境で育ったようです。

兄にはスウェーデン王立研究所に勤務し、神戸学院大学の客員教授を歴任した三木谷研一氏がいます。最近では三木谷氏が代表取締役会長を務めるプロサッカー球団のヴィッセル神戸の取締役副会長を務めています。

三木谷浩史氏の経歴

三木谷氏は一橋大学商学部を卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に就職し、1993年に米ハーバード大学経営学修士(MBA)を取得しました。帰国後、1995年に銀行を退職し、30歳になる年で当時黎明期だったインターネットを利用したビジネスを始めようと起業します。

三木谷浩史氏の楽天起業の秘話

当時はeコマースという言葉も出始めた頃で世間一般としては浸透していませんでしたが起業資金が比較的かからず、インターネットに将来性があることからEC事業を行うことにしたとされています。楽天のウェブサイトによると、ECモールの他にも地ビールの小規模醸造所の全国展開やアメリカの天然酵母ベーカリーを日本でフランチャイズする事業、またはコンタクトレンズの並行輸入など100以上の起業のアイデアを三木谷氏は検討していたそうですが、米国留学の経験からインターネットビジネスに可能性を覚えていたようです。

銀行マンからECモールを起業した実業家としてはAmazonを創業したジェフ・ベゾス氏がいるため、度々三木谷氏はベゾス氏に比較されることがあります。

楽天創業

1995年に三木谷氏はまずクリムゾングループを創業し、コンサルティング会社を設立します。この時はのちに実業家になる新卒社員の本城愼之介氏と2人だけの起業だったようです。翌年1997年に楽天の前身である株式会はエム・ディー・エムを設立しました。同年に『楽天市場』を開設し、従業員わずか6人だけだったといいます。

今でこそインターネット通販は当たり前になっていますが、当時のインターネットは電話回線を使ったダイヤルアップ方式で通信速度が遅かったため、Web集客などについて説明をしても理解できる人は少なかったと言います。そこで地道に地方の商店や個人商店を中心に楽天市場への出店を依頼し、最初はたった13店舗からの開業となりました。その後徐々に出店事業者を増やしていき、わずか10年で流通総額1兆円、世界第6位のインターネット企業にまで成長させました。

三木谷浩史氏は楽天でどのように成功したのか

三木谷氏の手腕は楽天市場を開設したことだけでなく、楽天をわずか10年で一大企業に成長させた経営手腕にあります。以下では同氏がどのように楽天を日本を代表するグループ企業に成長させたのかを見ていきます。

楽天グループの拡大

楽天と言えばそれまでECサイトの『楽天市場』でしたが、その間にも様々な分野でのM&Aを拡大していき、グループを大きくしていきました。例えば現在ある楽天銀行は元イーバンク銀行でしたが、2008年に楽天と資本・業務提携をし、翌年には同社の連結子会社となっています。

楽天カードマン

また、『楽天カードマン』のCMでもおなじみの楽天カードを普及させることで楽天市場へのトラフィックを増やし、大きな収入源を作る仕組みを構築した点は経営者としての手腕を発揮させたといえます。

そのほかにも2004年のプロ野球再編問題では『東北楽天ゴールデンイーグルス』を設立し、50年ぶりの新球団が誕生したことでもスポーツファンに覚えられています。また同年には三木谷氏が代表を務めるクリムゾンフットボールクラブがJリーグのヴィッセル神戸の営業権を獲得しました。ヴィッセル神戸は低迷しているクラブでしたが、同クラブを買収した経緯についてのちに三木谷氏は「(出身地の)神戸には個人的にとても強い愛着を抱いていた」と語っており、赤字続きだったクラブ経営は三木谷氏自身のポケットマネーを使って補填をしていたというほどです。その甲斐あってか、最近では元バルセロナFCの有名選手であるアンドレス・イニエスタなど超有名プレイヤーがヴィッセル神戸に移籍するなど世界でも知名度を上げることに成功し、クラブも天皇杯を優勝するなど実績も着実に重ねています。

必ずしも黒字化が期待できるわけでもないのに楽天がプロスポーツに参入する理由として、知名度獲得が主な目的と言われています。新興のインターネット企業は既存の大手企業に比べるといまだに社会的認知度や信頼度が高いとは言えず、知名度などを向上するにはプロスポーツへの参入が効果的なマーケティング手法となります。

楽天の携帯事業への参入

楽天モバイル

モバイル事業への参入は楽天にとって悲願でした。日本の携帯電波市場はドコモ、KDDI、そして新規参入者であるソフトバンクの3社による寡占状態が続いていました。楽天は第4のモバイルキャリアとして市場に入っていく覚悟で、2014年に格安スマホ事業(MVNO)を開始し、2018年には楽天モバイルネットワーク株式会社を設立して総務省より4G周波数の割り当てを取得することに成功します。翌2019年には5Gの周波数割り当ても取得し、2020年から5Gのサービスも開始しました。

楽天の強みは低額の利用料で、それまで日本の携帯利用料は他国と比べて著しく高いと言われてきましたが楽天モバイルの参入によって携帯料金が安くなることが期待されています。実際に2021年には楽天回線エリアではどれだけ使っても最大月額約3000円のワンプランを展開し、話題となりました。これまで携帯事業者はSIMロックをかけることで利用者の囲い込みをしてきましたが、SIMロックが原則禁止となったことで高額な他者から楽天のSIMフリープランに切り替えることが期待されていました。

しかし、競合他社も値下げを行ったことで楽天モバイルの優位性が下がり、結果として同社の赤字が続いているのが現状です。同社の資金繰りが投資家の間で不安材料となり、楽天グループの株価が下落しました。これにより三木谷氏自身の資産額も下落することになりましたが、一部の報道によれば三木谷氏は「自分の財産を出しても携帯事業を辞めない」としています。今後は繋がりやすい電波の周波数帯である「プラチナバンド」の獲得により、携帯事業の黒字化を目指します。

三木谷氏の『失敗を恐れない』姿勢が成功のカギ

楽天の事業を見てもわかるように、同社は新規事業への参入が歴史として多いことがわかります。ECモールも日本では最初ですし、プロスポーツへの参入や携帯事業への参入など、新しい分野に入っていくことが同社の特徴でもあります。新しい事業を始めると赤字を出すことは避けられず、これを初期投資としてみるのか起業失敗の予兆とみるのかは実業家にとって難しい判断となります。

三木谷氏は過去のインタビューで失敗について語っており、「失敗力とは、失敗を恐れない力」と述べています。「やってみてダメだったらやめればいいくらいのスタンスでいるのが“スマートミステイク”だと思う。日本人は特になんとなくの失敗を恐れすぎる傾向があり、時には社運をかけて勝負に出ることが必要」とも語っています。三木谷氏は失敗力を『失敗から学ぶ力』ではなく、『失敗をすることを恐れない力』と解釈している点が独自な点でしょう。

楽天の企業理念は『常識にとらわれずアイデアを重んじイノベーションで世界を変える』とされており、三木谷氏の失敗を恐れないスマートミステイクの考えがあるからこそ、高いカスタマーサクセス顧客満足が可能になっていると考えられています。

三木谷浩史氏の資産を種別に考察

上記の通り、三木谷浩史氏の資産は公になっていませんが、楽天株が主な資産となっていると考えられます。そのほかにも資産形成の一環として不動産や高級車、有価証券などを有している可能性もありますが、それを証明するものや情報もありませんので不明です。

三木谷氏本人は楽天株を8.25%保有し、妻の晴子氏も6.20%所有していることから夫婦だけで15%近くの株式を持っていることになります。さらに三木谷家の個人資産管理会社のクリムゾングループが10.59%の楽天株を保有していることから、楽天全体の25%を三木谷家が保有していることになります。

クリムゾングループはこれまでにヴィッセル神戸も保有しており(現在は楽天グループが保有)、楽天以外の有価証券や資産などをマネジメントしている可能性があります。そのため三木谷浩史氏にとって最大の資産はクリムゾングループと言っても過言ではないかもしれません。三木谷氏がクリムゾングループを合同会社にした理由は説明されていませんが、合同会社は一般的に株式会社と比べて会社設立費用が安かったり、決算公告が不要とされていたりという特徴がありますのでこれらが理由であった可能性はあります。

まとめ|三木谷浩史氏の成功からの学び

三木谷氏は銀行マンという安定して高収入な職業を捨ててまで楽天を起業し、大きな成功を収めました。起業の準備段階では結婚していたことから、起業をすることは大変なリスクであったと思われますが彼が成功できた理由は『失敗力』にあると考えられます。

上述の通り、三木谷氏は失敗力を「失敗を恐れない力」と定義しており、「やってみてダメだったらやめればいいくらいのスタンスでいるのが“スマートミステイク”だと思う」と述べています。人は失敗を極端に恐れるあまり、チャンスを掴むことができないことが多々ありますが、起業の成功例に共通してあるのは失敗を恐れない人間こそ成功を掴めるという点です。

楽天グループに1.8兆円ほどの多額の負債があることを指摘する専門家が多いですが、逆に言えばそれだけ信用クレジットの高い企業に成長した証ともいうことができます。同社は楽天市場開設時やプロスポーツ参入などに一時的な赤字に見舞われたことはありますが、三木谷氏の『木だけではなく森を見よ』の言葉で長期的な成長を続けてきました。携帯事業に参入する現在でも赤字が続き苦しんでいる状況ではありますが、三木谷氏の失敗を恐れない力で同社は携帯事業に投資を続けています。

『新たな事業を始めたいがリスクが怖い』、『失敗したらどうしよう』と悩んでいる方は、三木谷氏の『失敗力』を参考に“スマートミステイク”をやってみる気持ちでやってみると成功に近づけるかもしれません。本記事を参考に三木谷氏のような資産や年収得られるよう、自分の将来に投資してみるとよいでしょう。