顧客は、製品やサービスの購入に至るまでに様々な過程を通過します。このプロセスを概念化したのがカスタマージャーニーで、顧客サービスの観点からは不可欠な概念だと言われています。
この記事では、カスタマーサービスの意味や作り方、ペルソナ設定の重要性を解説します。後半ではテンプレートもダウンロードできますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
カスタマージャーニーとは?
「カスタマジャーニー」や「カスタマージャニー」と誤記されることもありますが、正しくは「カスタマージャーニー」です。
カスタマージャーニーとは、Customer Journey(顧客の旅)を音訳した言葉で、客が製品やサービスを購入するまでに経るプロセスのことを意味します。
商品の発見方購入までを包括した考え方で、顧客管理とも共通点があると言えます。カスタマーエクスペリエンスと近い概念ですが、カスタマージャーニーは顧客体験を線で結んで考えるという点で異なります。
事業を包括的に改善する取り組みとして知られており、会社が提供するサービスのどこに問題があるのかを特定するのにも役立ちます。顧客により良い体験をしてもらうことで、リピーターを獲得しながらブランドイメージを向上できるのがポイントです。
このことは市場での競争力獲得につながり、他社にサービス面で差をつけることができることを意味します。特に電子商取引(eコマース)に携わる企業(Amazonなど)にとっては死活問題となるため、こうしたビジネスはカスタマージャーニーを重視する傾向にあります。
カスタマージャーニーが意味するもの
カスタマージャーニーの定義は知っているけど、それが実際に何を意味するのか分からないという人は多いかと思います。そんな時は、ジャーニーを段階分けして整理してみると理解が簡単です。以下に、カスタマージャニーの全ステージをまとめてみました。
- 認識ステージ
- 検討ステージ
- 購入ステージ
- 維持ステージ
認識ステージ
顧客が製品やサービスを認識する段階です。広告やSNS投稿などを通じて認識に至ることが多く、消費者の抱える悩みやニーズを解消する商品が認識されやすいとされています。つまり、このステージでは如何にしてターゲット顧客にアプローチし、良い印象を残せるかどうかを検討することとなります。
【消費者行動】キーワードを用いて問題に対する解決策を模索していることが多いです。また、ブログやニュースを読んだり、掲示板で情報を収集している場合もあります。
【カスタマージャーニー例】リスティング広告を出すなどして顧客に積極的に接触する手法が考えられます。また、SNS投稿を通じてプレゼンスを高めるなど、能動的にブランド認知を高める取り組みが有効です。
検討ステージ
顧客が商品の購入を検討しているステージです。キャンペーンや特別プランなどでお得感を演出し、競合他社と差をつけることが焦点となります。積極的に対策しないとカスタマージャーニーの意味がありませんので、他社と比べてより魅力的な提案ができているかどうか、分析して対策を打つことが重要となります。
【消費者行動】特定の製品やサービスに関して、複数の会社の提供物を比較検討しています。特に価格を重視する傾向にあり、通販の場合は支払い方法や配送日なども比較対象に含まれます。購入ページに記載の情報をチェックすることもありますが、比較サイトなどで商品レビューを参照する場合もあります。
【カスタマージャーニー例】価格はもちろん、商品の情報が参照しやすいか、商品ページの表示速度は速いかなどの項目をチェックします。セールスイネーブルメントに焦点を当て、すべてのタッチポイントで顧客体験の改善に努めるのが重要です。また、カスタマーレビューなどを通して直接消費者に訴えるという手もあります。
購入ステージ
すでに購入を決めた顧客が、実際に商品を購入するステージです。コンバージョンに至るかどうかを左右するため、カスタマージャーニーを意味あるものとする上で最も重要な段階だとも言えます。また、会員登録やメールリストへの登録を通じて顧客ベースを拡大するためのステージでもあります。
【消費者行動】ストレスのない迅速な購入プロセスを望んでおり、立ちはだかる障害の種類によっては購入を先送りまたはキャンセルする可能性もあります。最も都合の良い支払い方法が利用可能であるかどうかは、消費者が最も気にすることのひとつです。
【カスタマージャーニー例】購入ページの高速化、決済方法の充実、全体的なプロセスの簡略化を推し進めます。また、顧客情報(メールアドレスなど)を収集することで、将来のマーケティングを容易にするのも重要です。
維持ステージ
すでに取引のあった顧客を維持するステージです。メールマーケティングなどを通して顧客と定期的に接触し、おすすめ商品を紹介するなどして再度の購入を促します。新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりも5倍のコストがかかると言われている(1:5の法則)ため、カスタマージャーニーの意味を最大化するためには、購入後のカスタマーケアも同様に重要となります。
【消費者行動】購入した製品を使用したり、次の商品の購入を検討しています。製品の使用感などに応じてブランドイメージが形成されていき、良いイメージを抱くブランド・小売店をもう一度使用したいという消費者心理が働きます。
【カスタマージャーニー例】リピーターを確保するためには、顧客と積極的に再接触を図るのが有効です。また、購入プロセスを見直し、前回以上のショッピング体験を提供できるようにするのは不可欠だと言えます。商品の購入者に対しては、レビューを提供するように依頼するのも有効です。
カスタマージャーニーの作り方
カスタマージャーニーの作り方は様々ですが、次のステップに従うのが一般的です。
- データ収集と分析
- セグメンテーション
- ジャーニーのマッピング
- 戦略の立案
- 実施とモニタリング
1. データ収集と分析
まず、カスタマジャーニーに関連するデータを収集します。SEO対策のような形で検索分析を行ったり、アンケート調査やSNS上の反応、取引に関するデータを分析したりし、どのステージでコンバージョンが発生するかなどの基本的な情報を集めます。
2. セグメンテーション
収集したデータをもとに、顧客を異なるセグメントに分割します。カスタマージャーニーとペルソナは切っても切れない関係にあるため、ターゲット顧客を詳細に把握することは戦略立ての第一歩とも言えます。
3. ジャーニーのマッピング
カスタマージャーニーテンプレートなどを用いて、ジャーニーをマップ化します。複数人で共同して行うと効率的で、各ステージにおける顧客行動や対策案を容易に特定することができます。カスタマージャーニーの作り方が分からないという従業員を共同作業に取り込むと、後々のジャーニー作成がさらに簡単になります。
4. 戦略の立案
各ステージでのサービス改善案を探ります。消費者のニーズや不満を解消する手段を考え、具体的なアクションを策定します。例えば、購入プロセスが複雑でコンバージョン率の低下が起こっている場合、より簡単な決済方法を導入するなどして解決を図ることができます。
5. 実施とモニタリング
顧客体験向上のための取り組みを実施する段階です。効果を常にモニタリングするのも効果的で、必要に応じて戦略を調整し、最適化を目指して改善を続けるのが重要となります。
カスタマージャーニーテンプレート
カスタマージャーニーのテンプレートを用意しました。保存方法は簡単で、画像を右クリック→[名前をつけて保存]を選択するだけで使えます。各項目の記入方法は以下を参考にしてみてください。
ペルソナ
ペルソナの項目には、想定するターゲット顧客の特徴を記入します。顧客増がつかみやすいよう、出来るだけ詳細かつ簡潔に要点をまとめましょう。
【記入例】
- 42歳の既婚女性で、よく化粧品情報をウェブで検索するAさん
- 28歳のやり手営業マンで、宣伝用のプレゼン発表を頻繁に行うBさん
ステージ
各ステージ(認識、検討、購入、維持)の簡単な見出しを考えて記載します。新しい掃除機の購入に関するカスタマージャーニーを例にとってみると、テンプレートには「掃除機をウェブ検索(認識)」「掃除機の価格比較(検討)」「公式ストアの利用(購入)」「掃除機の使用(維持)」などと記入することがでいます。
【記入例】
-
ディスプレイ広告の閲覧(認識ステージ)
- ブッキング情報の比較(検討)
消費者行動
ステージごとの消費者行動を記入します。分析により明らかな行動を記載するほか、考えられる潜在的な消費者行動をまとめるのも効果的です。
【記入例】
- 類似商品と価格や特徴を比べるため、外部の製品比較サイトを使う(検討ステージ)
- 商品を気に入っており、友人に勧めようと考えている(維持ステージ)
サービス改善案
カスタマージャーニーテンプレートの最後の項目には、顧客体験を改善するための対策案を記入します。顧客が不満を抱えている場合は積極的に解消し、潜在的なニーズを満たすような対策案はあるかどうか考えてみましょう。
【記入例】
- キャンペーン情報に、競合他社よりも価格が低いことをアピールする文言を取り入れる
- 既存顧客に商品に対するレビューを書くようにメールで依頼する
カスタマージャーニーとペルソナ
BtoB、BtoCを問わず、ペルソナはカスタマージャーニーにとって欠かせない概念です。ペルソナとは「ターゲット顧客を体現する架空の人物」のことで、どのような顧客を相手にビジネスをしているのかを直感的に把握する目的で用いられます。
ペルソナとは、ターゲット顧客を体現する架空の人物のこと
企業が顧客データを元に作り上げるのが一般的です。カスタマージャーニーの観点からは、ペルソナを作成することで消費者体験をイメージしやすくなるなどのメリットがあります。例えば、20〜40代の働く女性がターゲットの場合、次のようなペルソナを作成することがあり得ると言えるでしょう。
【名前】近藤真紀子
【性別】女性
【年齢】31歳
【職業】ウェブデザイナー
【年収】550万円
【趣味】読書、ハイキング、写真撮影
【よく利用するサイト】Google、Instagram
【いま欲しいもの】カメラ用レンズ、犬用ベッド
顧客行動について考える際は特に有用で、どのような行動パターンが考えられるかを簡単に推測することができます。また、BtoBにカスタマージャーニーを適用する場合、企業をペルソナ化するのも有効です。
ターゲット層に関するデータがないと実行が難しいため、ペルソナ分析を行う際はトレンド分析ツール(コンテンツマーケティングの記事でも紹介しています)などを用いるとよいでしょう。その他にも、アンケート調査を実施したり、SNS投稿や商品レビューを通じて顧客層を特定するという手段もあります。
カスタマージャーニーまとめ
カスタマージャーニーは、BtoBでも使える便利な概念です。「古い」という人もいますが、逆に言えばそれだけ一般的で有用な手法だとも言えます。テンプレートを使うと作り方が簡単ですので、意味ややり方を覚えた後はぜひ実践してみてください。